好きな人? そんなの知らない。 私の青春は既に終わってるから。 みんなはまだ大学生なのに、という。 関係ない。 最後に恋をしたのはいつ? そう、昔。 子供のころ。 好きな人がいた。 四年もの間、温めて育んだ、純粋で一途なもの。 小学六年の冬、あの日。 必死の思いで相手に伝えた。 そして…… 捨てられた。 あいつはその後、都会の中学へ行き、私とは別の世界の人間になった。 あいつと会う前からの友達は私を振ったのがあいつの優しさだと言う。 けれど。 私は認めない。 そんな自分勝手な優しさ。 どんなに遠くに行ってもたまに帰ってきてくれればそれで良かった。 中学、高校と付きまとっていた悲しさ、寂しさに比べれば、年に数回会えるだけでもどれほど良かっただろう。 別に、付きあってくれなくても良かった。 居なくなってしまわなければ。 それだけで…… 以来、好きになった人は居ない。 そんな小さい頃の事なんか忘れちまって俺と付き合おうぜ、と言う奴がいる。 俺と付き合えばそんなつまんない男の事なんて忘れちまえるぜ、と言う奴がいる。 でも、私にとってあれは小さい頃の、過去の話なんかじゃない。 忘れられる事でも無い。 そして、あいつはつまらない男なんかじゃ絶対にない。 風の噂に聞いた。 いや、必死に調べ上げた。 あいつは帝都大に受かったらしい。 あいつだけしか見えてなかったあたしを捨てて。 田舎の大学に埋もれているあたしを置いて。 |