3章−6

作:夢希
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 これからどうするか、それが問題だった。
今は使節団の緊急会議中。
僕からすれば『こんな大事件が起こったのだから今すぐ鎮鋼に戻るべきだ!』と思うのだが、一緒に来ていた使節団の面々はどうやら違う意見らしい。
「ここから最終目的地である庫車なぞすぐでございましょう」
「その通りじゃぞ。
それに庫車まで行っても今すぐ帰ってもほんの3,4日の差。
大した違いは有りませぬ」
こんな意見が出るが本音は
「そもそも、騎馬民族の襲撃如きで怯えて予定を変更するなぞ鎮鋼府の恥です」
この意見に集約されるんだろう。
何しろ使節団の面々のほとんどは舞踏会以降ずっと寝ていて起きたのは騎馬民族が去って行った後なのだから『朝起きたら町には敵の捕虜がたくさん居て、町の外では敵の死者を秦の部隊と町の人達が片付けていた、なんかびっくり』ということになる。
彼等からしてみれば夜に騎馬民族が数百人でこの町を襲ってきたけれど運悪く鎮鋼府からの使節団や法術師が滞在していたために返り討ちに遭って多数の死者や捕虜まで出した。
人数の報告も闇に紛れての襲撃に驚いた見張りの間違いとして片付けている。
報告どおりの人数ならこっちが勝っていたはずはないと思うのも分かるし、秦の率いる護衛が無傷であることからどうしても危機感が沸かないのだろうが……

 ちなみに、町の人達が一度僕等を裏切ったことは言っていない。
なんせ目撃者は秦の部隊ほぼ全員なのだからこれが漏れないはずはないが、今彼等に知れると町の人達に反逆への見せしめとか言って何かとんでもないことをしそうなので一応この町から出るまでは黙っておくことにした。
秦が起したのは秦の信頼している人達2人だけだったというのも功を奏した。
要するに今会議をしている中で正確な情報を知って居る人はほとんど居ないのだ。
当然、このままじゃ埒があかない。
「とにかく、僕達を狙ってきたのであれば一刻も早く鎮鋼へ報告しない訳には行かない」
「ならば使いの一人でも送れば十分でしょう。
その方が我々全員が戻るよりも早く戻れましょうし」
「なるほど、それは良い案じゃな。
使いがとりあえず報告だけしておき、その数日後に我々も戻る。
それなら紅殿も文句はございますまい」
「そんな、連絡を送るだけならあなた達が寝ている間にとっくにやっています。
彼等が僕達を襲ってきた以上、まだ何かあるかもしれないと言っているのです」
「何か、とは?
我々の護衛は僅か五百の兵で昨夜五千という10倍もの軍勢を無傷にて追い返したのでしょう?
そのような素晴らしい護衛が付いていながら何を恐れることがありましょう」
クッ、完全に嫌味だ。
しかも人が苦労しているときに寝てた奴に言われるとなんだか無性に悔しい。

「どう、何か決まった?」

 リィナが会議室に入ってきたのはそんな堂々巡りに差し掛かりかけた時だった。
もちろん、正式には使節団どころか鎮鋼府のものですら無いリィナにここに入る資格はない。
そう言うわけでリィナの後ろでは入り口に居たらしき見張りがしきりに何か言ってたりするがさすがに法術師に逆らう気は無いのか手は出せずにいる。
と言うか完全に弱気でお願いします口調だ。
どちらかというと僕達に自分は喜んで迎え入れたわけじゃありませんよ、と言うのを僕達にアピールするためのよう。
もちろんリィナがそんなのに気を使ってどうにかするわけも無く、室内を見回して僕を見つけると端に置いてあった余りの椅子を一つ掴んで僕の横に来るとそれに座った。
使節団の者達もリィナが怖いのか何も文句を言わない。
昨夜までは法術師と恐れながらもやはりたかだか小娘と言う視線であったけれど今はそうでは無い。
あるのは恐れを超えた畏怖。
護衛が無傷なのは法術師が一人で追い返したお陰、ということ位は聞いているのだろう。
「えと、」
リィナが何かを言おうとする。
彼女が何か言いそれに僕が理解を示せば、それがどんな不条理なものであろうとも自分達は従わねばならないだろう。
こんな若造2人に!それは屈辱だ。
そういった想いが当たりを支配する。
それに構わずリィナは言葉を続ける。
「やっぱり一人って暇!
あたしも参加していい?」



3人ほど椅子からずり落ちた。



「今は鎮鋼に戻るかこのまま予定通り庫車に行くかを決めているところなんだ」
リィナの乱入によって緊張の解けてしまった会議は、一旦休憩を挟むこととなった。
今やっとリィナにこれまでの会議の進行を話し終えたところ。
「で、ランはどうしようと思ってるの?」
「うん、戻るべきだと思うよ。
色々理由は有るけれど、五千ものまとまった兵と言うのがどうしても気になるんだ。
この規模は一つの氏族だけでどうにかなる規模じゃないんだよ。
幾つかの部族が結託して、それでも自分達の本体が丸裸に近い状態になるのを覚悟で来てる。
皆がこの数字を信じようとしないもの見ていないからとかそう言った理由の他に、そんな規模は普通じゃありえないという常識があると思うんだ。
そのありえない規模の軍勢が出来て攻めて来てるということは騎馬民族の間で何がしかの大掛かりな動きがあったとみていい。
ならばそれが何かを調べないといけない。
今回だって相手にしてみればほぼ無傷の状態で追い返されただけに過ぎないしね。
相手はまたすぐにでも動けるはずだ、急がないと。
でも、やはり鎮鋼へ来たての僕だけじゃ絶対的に知識が不足しているんだ。
ここに居る人達じゃ、信じないってわけじゃないけどやっぱり一抹の不安は残るし。
一刻も早く鎮鋼へ帰って燕や賈、そして将軍に報告しないと」
「要するにランは早く帰りたいのね。
ま、あたしに任せなさい!」

 会議が再開された。
「それでは紅殿、お主の考えも分からんでもないが団長の独断で行動するわけにもいかぬのは分かってもらえるかな?
特にお主はまだ鎮鋼へ来たてで砂漠でどう行動すれば良いのかも良く分かってはおらぬであろう?」
「鎮鋼へ帰ろうって言うのは僕だけの考えじゃないと思うのだけどな」
とはいえ、秦など賛成してくれそうな人を多めに含めても2割以下なのには変わりはない。
「1人増えようと2人増えようと変わりはせぬじゃろ」
若造の屁理屈にむしろ笑うしかないという感じ。
「ならば、進むのに賛成な人は進み、反対の人は戻ると言うのは?」
「護衛の数は限られておろう。
それを2手に分けるとなれば。
それこそ五千どころか千もいらぬ。
各個撃破の的じゃ」
「あのさ、それじゃあたしとランだけが鎮鋼へ戻るって言うのはどう?」
リィナが口を挟む。
「そんな。
帝国の威信を見せるのが今回の使節の目的ですぞ。
団長が居ないなどとは話にもならん!」
「ねえ、相手先には団長が誰か知らせてあるの?」
「無論。
今回は特に団長殿がお若いですからな。
間違えや粗相の無いよう年や特徴まで知らせてある」
「そう。
と・こ・ろ・で。
シンってなんかそこはかとなくランに似てない?」
「な、な、な」
いきなり名前を呼ばれて秦が慌てる。
「思いませんな」
これはみんなの総意だろう。
確かに、僕と秦じゃ顔や雰囲気に違いがありすぎる。
「そう?
でも、ほら。
年とか背格好だけなら。
それに髪も目も、って鎮鋼以東の人はみんな一緒なのよね。
でもさ、一度もあった事の無い人なら特徴だけ聞かされても、『こちらがランです〜』って言われたら間違えちゃうかもしれないわよね?」
「何が言いたいのですかな?」
「シンにランの身代わりさせたらランは鎮鋼に帰れるかな〜って」
「それは。
確かに可能でしょうが。
ですが、ばれた場合にはやはり相手に失礼甚だしい。
それに、お2人だけではやはり何かがあった時に……」
「あたし達に何かが?
あたしとランの2人に『誰』が『何』を出来るのかしら?」
その時、あるものが意を決したように立ち上がり、
「だ、だがそれでは我等の方は……
い、いや。
なんでもない」
尻すぼみになってやっぱりいいやと座る。
本心はリィナが消えると自分達の方こそ危険になるのでは、と怖れているのだろうがそれを正直に言うことや、そもそも元から使節団の一員でもないリィナに残れと言うのはさすがに気が引けるだろう。
う〜ん、考えてみるとリィナってばなんて気ままな立場に居るんだろう。
「お二人はここら辺の地形には詳しくないのでは?
万一砂漠にて迷ってしまわれたら我々も将軍になんと申し開きすれば良いやら」
本当に僕に何かあったらむしろ嬉々として報告するんだろうけれど。
「大丈夫、あたしが法術でここに来るまでの町やオアシス全て記憶してるから」
「そもそも、お二人が離れ離れになる可能性も……」
「それも大丈夫。
ランの居場所はあたしが法術で分かるから」
そこで、リィナは一度言葉を区切る。
「さて、ランは急いでるんだったわよね。
それじゃ、これ以上何か意見のある方は?」
周りをゆっくり見回すが誰も何も言わない。
「それでは皆さんはここでゆっくり会議続けててくださいね。
あたし達はこれで行きますんで」
えっ、もう?
「だって急いでるんでしょ?」
リィナはそこでペコリと礼をするとそのまま本当に出て行った。
慌てて僕もついて行く。
……ホントに良いんだろうか?
秦は端の方の席から行け行けって笑って手を振ってるけれど。
ま、大丈夫だろう。
気楽にそう考えてリィナの後を追いかけた。



 町を出て、しばらくたった。
鎮鋼への道はリィナがどうにか出来ると言っていた。
あとしばらくたてば反対側の門から秦たちも出ていくだろう。
「ラン、ちょっと良い?」
「ん、どうしたの?」
「ちょっと休憩。
馬を降りて」
そういうと返事も待たずに馬から下りる。
今は15時、休憩と言われても太陽から身を隠す場所も無い。
「もうしばらく進もうよ。
太陽が弱まったらそのときに少し休憩しよう」
「んっとね、実をいうと休憩じゃないの。
ちょっと便利な法術を使おうかなぁって思って」
「法術?
なんの?」
「ジェドおじ様の登場シーン覚えてる?」
「リィナの渾身の法術が何かしたのっていうくらい簡単にあっけなく止められたやつ?」
うん、あれは本当にあっけなかったな。
「ちがうっ、その次!
遠くから一瞬で近寄ってきたでしょ」
覚えている、リィナの法術を止めた後、ジェドはどう見ても歩いているようなのに馬よりもはるかに速い速度でこちらに近づいて来た。
あれはかなり不思議な光景だったかな。
「思い出したよ」
「あれを使おうかと思うの。
そうすれば5,6日で鎮鋼まで戻れるわ」
「へ〜、楽なもんだね。
じゃ、ちゃっちゃとその法術を使って早く戻ろう」
「簡単に言うわね」
リィナがあきれたように息を吐く。
「ランク軽減二種規定法術。
思うがままに、速く」
そして法術を唱えた。
いや、宣誓だったかな?
法術を掛けたようなので試しに馬を一歩進ませてみる。
……正確に一歩分だけ先にある馬の足が見えた。
「あのね、法術は今掛けてあげたけど、それがどの程度効果をあげるかは本人次第なの。
やり方を説明するからその通りにして見て。
地平線を思い浮かべてそれから足を上げる、その足を地平線まで伸ばす。
試しに一歩進んでみて。
あ、馬はランの分もあたしが面倒見るから。
初めは自分の足の方が楽だと思うから」
言われた通りに考えながら右足を一歩進める。
……正確に一歩分だけ先にある右足が見えた。
「気にしない気にしない。
初めはみんなそんなものよ。
もっと軽い気持ちで。
じゃ、まずは二歩先を目指して見よう。
そうそう、そんな感じ。
うわっ!
ていうか。
なんでもうこんなに歩けるのよ?
ちょっと待ちなさ……」
声は次第に遠ざかっていき、しまいには何も聞こえなくなる。
ふと後ろを見ると何もなかった。
あたりには砂漠だけ。
そして、視界の端にリィナが歩いているのが見えて。
そのリィナが高速で歩いてきて僕の横に着いた。
「ラン、なんでちょっと要領を教えただけでもう歩けてるのよ?」
「教えて貰った通りにやったから?」
「口で教えただけでこれが簡単に出来るようなら法術はもっとたくさんの人が使えるようになってるわ!」
「う〜ん、素質あるのかな?」
「素質云々じゃすまないわ。
今まで音楽と言う概念すら知らない人に楽器の弾き方を口で説明したら、拙いながらもそれなりのレベルの曲をいきなり弾いてきたみたいなもんよ。
実際の話し、今日はこつを掴めば良い方で実際にはほとんど進めないだろうなって覚悟してたのよ。
それをあっさり。
全く、普通に法術も使えるんじゃないかと勘ぐりたくなるわよ」
「はは、でも法術は連合の民以外は使えないでしょ」
「ううん、そうでもないのよ。
そうであるのが当然に感じるというだけで」
「どういうこと?」
「これ以上は秘密。
ただね、法術は思い込みと思い込ませの魔術なの。
それも世界を相手にしたね。
さて、それじゃしばらく歩きましょ。
慣れるまでは適当に先を歩いてて。
あたしは後ろからこの2頭を連れてついて行くから。
『ランク軽減二種規定法術。
簡易遠話』
これで遠くに居ても相手の話を聞けるようになるわ。
慣れればすぐに二人で話しながら歩けるようになるわよ」
リィナは馬2頭を指しながらそういうのを見ながら足を進めるとまたリィナは後ろに消えていった。



 そして、たまに休憩を挟みながら延々歩き続けた。
もう月も上ってきている。
「ラン、もう今日はこれで休憩にしましょ」
「まだ、もうちょっと。
夜中寒くなる前の涼しいうちに出来るだけ行こうよ」
「ラ〜ンッ。
あなたは歩いてるだけだからいいわよね。
でも、あなたが歩くために、そして今もあなたとこうやって話すために法術を使い続けている誰かさんをちょっぉとくらい、いたわってくれても良いんじゃない?」
「あ、ごめん。
気づかなかった。
そうだよね、数時間でここまで着いちゃうんだから相当疲れたよね。
じゃ、あそこに見える町で良い?」
目の前に見える町、確か今日まで居た吐露から3日ほどの場所のはず。
「そうしたいから今言ってるの!」


「お二人さん一緒で良いのかい?
部屋は一つしか余ってないよ」
それほど大きな町でもないせいか町には小さな宿屋が一軒しかなかった。
お腹の大きな宿の女将さんがそう聞いてくる。
さすがに男女が同じ部屋と言うのはまずいかな、と思ってると
「あ、それでお願い」
「リィナ!」
「ランが外で寝たいなら止めないけれど?
あたしはふかふかのベッドがいいな」
「はいはい、ここはオアシスだよ。
もっと開放的な気持ちになんな。
女の子が良いといってるのならそう固くする必要もあるまいさ。
それじゃ、お二人様ご案内。
部屋は二階になるからついて来とくれ。
夕飯を食べたいならすぐに降りて来ないとだめだよ。
夜中はつまみと酒くらいしか置いてないからね」
勝手に決まってしまった。
まあ、リィナはかなり開放的な性格だし連合ではそう言ったことを忌避する風習自体がないのかな。
女将さんについて階段を上り、今晩僕等が泊まるであろう部屋の前に行く。

 そして、部屋を開けるとそこには『そいつ』がいた。

 奥にある机、その椅子に座ってこちらを見ている。
リィナの義理の兄であるジェドだ。
まさか1日で再会することになるとは思わなかった……
「おやおや、お客さん。
金も払わずに勝手に入ってもらっちゃ困るじゃないか。
残念ながらこの部屋はこの方達のもんだよ」
「ああご主人、勝手に入ったのはすまないね、謝りますよ。
ですが私はそこの2人の保護者を自認してましてね。
まだ結婚もしてない若い2人の、ね。
2人きりで同じ部屋に宿泊するのを認めるわけにはいかないんですよ」
女将さんは不審そうな顔。
そりゃそうだ、いきなり2階の部屋に居るような人の言葉を素直に聞く方が少ないだろう。
「あちらさんはああ言ってらっしゃるけど?」
女将さんに話を振られてリィナはびっくりしたように首を横に振ったが、その後ジェドの意味深な微笑を恐れてか慌てて縦に頷く。
「そうかい、こっちは別に3人分のお金を払って貰えれば文句は無いからね。
あ、予備のベッドなんか無いから一人はソファーで寝てもらうことになるよ。
1階に有るのを持ってきてやるからちょっと待っててちょうだいな」
それだけ言うと女将さんは「しかしどうやって入ったのかねえ」などと首を振りつつ下に降りていった。
「さぁて、リィナちゃん。
言い訳は?」
背の高いジェドに上から睨みつけるようにされながら言われて、リィナはフルフルッと大きく首を横に振る。
僕はと言えば何の言い訳なのかも思いつかない。
「えと、ひょっとして今日使ってた法術って前回みたいに使っちゃいけないものだったとか?」
昨夜もジェドは法術絡みでやって来た。
「いいえ、違いますよ紅君。
君も少しは気を使ってもらいたいね」
???
何にだろう。
「分かりませんか?」
ジェドは椅子から立ち上がるとそう言いながらリィナの前に立ち、
……
口の端を両手で掴んで引っ張った。
「じぇどほひさは。
いたひ、ひたいよほ」
リィナが何か叫んでいるようだが意味をなさない。
ジェドはしばらくリィナで遊んでいたが、やがて唐突に両手を離すと今度は僕達2人を見て言った。
「さて、二人ともそこに正座しなさい」
何がなんだか分からないがリィナがまねをするように言うのでジェドの前に座る。
後から聞いた話だが僕達帝国の人間にとっては普通の座り方である正座だが、連合では主に子供への罰として使われているらしい。
僕からしてみれば冗談みたいな話だがリィナはその後『足が〜』とか『しびれる〜』とか叫んでいたからたぶん本当なんだろうな。
「2人とも、私がなんでここに居るか分かりますか?」
首を振る。
ジェドがなにやら叱ろうとしているのは分かるけれど、それが何なのか?
連合のことはさっぱり分からない。
「さて……」
ジェドが何か言おうとしたがリィナがそれを遮るかのように口を開いた。
「だって、しょうがないじゃない。
あたしは死ぬ程疲れてるし。
ここに宿屋は一軒しかないんだし。
部屋はここしか無いって言うんだもん」
「言い訳ですね。
それに、それは疲れて動けない状態で男と同じ部屋に寝ようとした、と行ってるのと一緒ですよ?
かなり思慮の浅い行動だとは思いませんか?」
あ、なるほど。
   ・
   ・
   ・

 システムの大陸北東部監査システム総管理(お偉いさん)に現場を押さえられ、不純異性交遊のかどで叱られる。
嘘の様なホントの話し、第二弾。
連合はホント奥が深い……

   ・
   ・
   ・

 結局ジェドは今晩一緒に寝るほど暇じゃなかったのでリィナが部屋で眠り、僕は女将さんの持ってきたソファーを部屋の外に置いて眠った。
女将さんは迷惑そうな顔してたけどジェドが3人分払って出て行ったら途端に機嫌を直したようで結局何も言わなかった。


 鎮鋼へは吐露を出て2日目の昼には鎮鋼についた。
馬で行くのと比べると信じられないくらいに速い。


「さて、っと。
坊やと嬢ちゃんがここに居るって事は目の錯覚かな。
俺もとうとうぼけちまったってことかね?
それとも法術かい?」
いきなり燕の前に出現した本当ならまだ庫車周辺にいるはずの僕達を見ても、燕はさほど驚かなかった。
「燕、今どうなってる?」
「おや、やはり本物かい。
どうなってると聞いてくるからには鎮鋼で何が起こってるか大体の見当はついてるのか?
そもそも坊や達は一体どこまで知ってるんだ?
ここまでの町で何を聞いた?
いや、慌ててすまんな。
どこから話すのが一番良いか分からないもんでな」
やはり鎮鋼府でも何かが起きたらしい。
「ん、最初からお願い。
僕も分かってるわけじゃないんだ。
大変な事が起きただろうってこと以外は」
燕の話によるとこうだった。
一週間ほど前に李将軍が反逆。
夜中に燕と賈は10人からなる刺客に襲われたらしい。
燕達の他、第1,2及び第3,4、第7騎兵軍軍都指揮使、第8騎兵副軍都指揮使、第1及び第2歩兵軍軍都指揮使が襲撃を受け、うち第1,2騎兵軍軍都指揮使張架、第8騎兵軍副軍都指揮使楊功下、第2歩兵軍軍都指揮使鄭朋が死亡、邸宅に火をつけられている。
また、鎮鋼府仕官宿舎を砲撃が直撃、多数の死傷者が出たらしい。
将軍は家族を残したまま第8騎兵軍の一部と共に逃亡。
現在も行方をつかめて居ない。
これらの結果、鎮鋼は極端な人員不足に陥った。
特に運営を行う頭脳面での影響は甚大で、再配置を行おうにも命令系統すらどうすれば良いか分からない状況らしい。

 色々な面で大事と言える。
だが、ちょっと待てよ。
将軍は家族を残して逃亡?
「燕、ちょっと地図を見せてくれないか?
帝国及びその周辺諸国まで載ってるような大きいの。
無ければ北半分とかでも良い」
「分かった。
よ、っと。
これだこれ。
で、どうしようってんだ?
将軍の足取りでもつかめるのか?」
「燕、僕等は数日前に騎馬民族からの襲撃を掛けられたんだ。
規模は五千。
これは大規模な同盟、すなわち優れた統率者、が居ないと難しいよね。
で、リィナ、ここが僕達の襲われた町吐露だ。
そして、その上に戊琉甫山脈があってここら辺がきっと町の人の言ってた山脈の裂け目。
で、襲ってきたやつ等が普段居るのはきっとこの山脈のさらに北のこの辺で……
この地図のハルン国境からは少し遠いかな?
でも、ハルンの成長速度とこの地図の出来た時期を考えれば既にハルンに占拠されて従わされていた可能性は高い」
「ちょっと待て、ハルンだ?
坊やは将軍はあそこに逃げたって言うのかい?
しかも、今央路周辺の騎馬民族すら支配してる、と。
何の根拠があってだ」
「家族を捨てて亡命をした帝国のそれなりの役職の人ってのに覚えがあるんだ。
今回のはそれに似ている」
「坊やんとこの親父さんか。
ちくしょう!」
燕がうめく。
「ちょっと、ランのお父さんってどういうこと?
2人で分かったつもりになってないで説明しなさいよ!」
説明?
今起こっていることの全ての説明など出来るはずがない。
ただ鎮鋼は……
いや、帝国自体が周りの国々も含めて大きな動きの中にあるのは確かだった。
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