天地が初めて開けました時に、高天原へ三柱の神様がお生まれになられまし
た。 天の御中主、高御むすび、神むすび。 ですがこの方々はみな独り神として身をお隠しになられてしまわれました。 次に天地がまだ出来たばかりの時、つまり地は脂の浮かぶようで天はくらげの漂うような時に 葦の芽生えるがごとくに湧き上がってこられた神様が二柱居られました。 けれど、この二柱もそれぞれ独り神として身を隠してしまわれました。 これら五柱の神々は特に別天つ神(コトアマツカミ)と言われている存在です。 次にお生まれになられたのはさらに二柱。 これら二柱もまた独り神として身を隠してしまわれました。 さらに、双える(タグエル)夫婦神としてあー、えーと…… 10の神様が次々と生まれました。 これらの神様は併せて神代七代と申します。 (先の独り神は一柱一代、後の10柱は二柱にて一代と申します) ここに至りまして、末の二柱であるいざなぎといざなみは天の沼矛を授けられると「この脂のように漂っている国を固めよ」という国造りの命を戴きました。 ワシ等は間違ったのかもしれん。 「おにいちゃんっ、ついにあたしたちもお爺様方から国造りの許可を貰ったわよ!」 いざなぎといざなみは兄妹神であった。 お爺様と言われてもワシ等は生まれるのではなく独りでに成るのじゃから血縁はない。 天つ神の中では一番最後に生まれたこともあってかあの妹は甘えん坊に育った。 ワシ等が甘やかしたのも原因じゃろう。 そして、兄は押しが弱かったの。 「う〜ん、でも漂える若き地なんてもうほとんど残ってないじゃないか。 うひじに様なんてユーラシアとかいって大きな大陸作ったってのに、 どんどん小さくなってって僕たちの分なんてほとんど残ってやしない」 確かに当時ではすでにワシの使った量の1割も残ってなかった。 だがあの当時はこんなに神が成るなどとは知らなかったのだからしょうがなかろう? 「愛さえあればそんなのどうにでもなるんだから。 二人の愛の結晶に大きさなんて関係ないわ!」 「あーはいはい。 そうだな、愛があればどうにかなるかもねえ」 「何でそんなだらだら文句ばっかりなの。 おにいちゃん、結婚よ結婚! 結婚するのよあたし達。 そろそろちゃんとあたしのこと異性としてみてよね。 独り神様なんて伝説的だからこそ格好いいのよ。 初めから一柱にして完全なお方達じゃないと無理なの。 私と結婚しなかったらおにいちゃんなんてただの売れ残りなんだからね」 「売れ残りって…… その時はお前だって同じだろう」 その言葉を聞いて両手を挙げて殴りかかる妹。 まったく。わかった、わかったよ。 あぁおもだる様にまたからかわれる」 お互いにふざけているだけじゃ。 思えばこのもの達にとってはあの頃が一番幸せだったのかも知れぬ。 あのような小さき島々など。 だが、任せたのはワシ等か。 ワシ等は間違えたのやも…… 「何言ってんの、恥ずかしがるからおもちゃにされるのよ。 私みたいに堂々としてりゃ良いのに。 ほら、作成用のかき混ぜ矛はもう貰っちゃってるんだから」 「もう貰ってる? あぁほら、やっぱ僕の意思とか完全に無視されてるし」 「うるさいわね。 どうせお兄ちゃんには逆らう権限も気骨もないんだから。 さっさと天の浮橋行くわよ」 天の浮橋とは、まあ天から伸びた桟橋とでもいう感じかのう。 そして、あの二人は矛で海を混ぜて島を造るとそこへ降りて結婚の準備を始めたのじゃ。 |
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