ん、
国造りの仕方を教えてほしい? 簡単さ、天つ神二柱と漂える若き地さえあれば良いんだ。 漂える若き地が無ければ子を成しても神になるばかりで地は生まれねえ。 そうさな、いざなぎといざなみで見てみっか。 「結婚する前に確かめておきたいのだけど。 いざなみ、お前の体はどうなっているんだい?」 「うんとね〜。 もう大人なのに、まだちょっと満ちてないところがあるみたい」 「そうか。 僕は逆に成長しすぎたのかちょっと余ったところがあるんだ。 じゃあ僕の余ってる部分を君の足りていない部分に挿そうか? 僕はそれによって国を成そうと思うけど君はどう思う?」 ギャハハハハハ、この二人は何度見ても笑えるだろ。 見てみな、いざなみの『おにいちゃん本気なの?』って目をさ。 「え、ぇえと…… 私はそれで構わないわ。 むしろ望むところ? というかよっしゃ来い?」 「何を苦笑いしているのさ、いざなみ。 じゃあ始めるよ、君はこの柱を右から回って。 僕は逆から回るから。 それから国造りを始めよう!」 ん〜、回ってる回ってる。 え、何してるのかって? 婚姻の儀式ってやつさね。 天の御柱を回って巡り会う。 これまでの関係を捨てて新しい関係を築くための儀式さ。 ほら、回り終わった二人がそろそろ出会うぞ。 「あ、おにいちゃっ ……じゃなくて。 あら、なんて素敵な方なのかしら」 「ああ、なんと素敵な人だ」 「おにいちゃん、それ棒読み」 「う〜ん、僕が先に声掛けた方が良かったかな。 それにしてもいざなみ、お前ねえ。 声を掛け合う位で失敗しかけないでくれよ」 「ふふ〜ん、こんなのどうだって良いもんね。 ほら、早く! 私たちの愛の巣が待ってるんだから」 婚姻の儀だってのにねえ。 それがどれほど大事かわかっちゃいないってのがまた。 間違えに対しては報いが必ず降りるってぇのに。 ・ ・ ・ 「何で、何でまだ起ってくれないの」 「水蛭子(ヒルコ)はまだ歩けないのか? 何かミスったかなぁ」 「ふんっ、だ。 こんな言うこと聞かない子は海に流しちゃうもんね〜っだ。 おにいちゃん、もう一度よっ」 「いざなみ、あのなあ。 そんな簡単に海へ流すなんて、一応我らは神なのだぞ」 「チッチッチッ。 おにいちゃん、甘いわよ。 時代は大量生産大量消費なんだから」 「時代って、何の時代だい。 それに、それと国造りとは何の関係が」 「うっさいわね。 さあ、大量生産するわよ!」 と言うわけでもう一度試すんだが上手く行くわきゃ無いよな。 客人は何が悪いかわかるか? ま、待ってな。 答えはすぐだ。 ほら、あいつら困って俺に聞きに来てるだろ。 「おもだる様、子供がうまく作れないのですが」 出来るだけまじめな顔を造り、用意しておいた言葉を吐いている俺。 「それはだないざなぎ。 お前に愛が無いからだ」 あはは、いざなみのやつがいざなぎの首絞めてるだろ。 俺がこういう顔して何か言うときは必ず冗談だってのに…… 「こらいざなみ、止めろ止めろ」 「ゲホッゲホッ。 おもだる様、あやうく冗談で死に掛けましたよ」 う〜ん、いざなぎのこの恨めしそうな目も中々にそそるんだよな。 「だが、完全に嘘ってわけでもねえぜ。 ちょっと待ってな、占ってやる。 っけど、どうせお前らのことだから天の御柱回る時もいざなみが一人ではしゃいでたんだろ?」 何で知ってるのと言う顔で頷くいざなみ。 妻の が隠れて全部記録してるからなんだがばらすのはまだまだ後さ。 お前さんだってこうやって見てるわけだから共犯だぜ。 別天つ神の皆様にも好評だから、言ってみりゃ全世界公認みたいなもんさ。 「これじゃあ駄目だな」 型通りの占いを済ませた後でもったいぶった顔の俺。 「片方だけ極端じゃうまく行くはずも無い。 例えばいざなぎの方から積極的に声を掛けるくらいはしねえとなぁ」 とたん俺に抱きついてきたいざなみとものすごく嫌そうな顔してるいざなぎ。 この時もそうだが、俺はいつだって国造りそのものよりこの二人の関係の方が心配だったんだぜ。 「さ、おにいちゃん。 今度こそ成功させるわよ! 今回はおにいちゃんの方から誘うんだからね!」 「天の御柱の儀式をもう一度、か。 これって以前の関係を帳消しにして新しい関係を築くって儀式だよね。 ということは、あぁいきなりバツイチで再婚か。 しかも再婚相手はまたいざなみ……」 「だから、天の御柱はそんな過去からもおさらばしてくれるんだから」 「なら、僕たちもう兄妹とは違うじゃないか」 まあ、元々本当の兄妹かどうかも怪しいけどな。 「おにいちゃんは細かいことにぐちぐちうるさい! 兄じゃなくてもおにいちゃんはおにいちゃんなんだから。 ほら、さっさと始めるわよ」 なんだかんだ言って楽しそうだろ。 結局この二人に関しちゃ俺は何も出来なかったわけさ…… |
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